ホームサウンドルート2007/8サウンドルート2007/8-I 曲目解説

松岡俊克/ピアノのための音楽 I …金井泉乃(ピアノソロ)

Toshikatsu MATSUOKA : Music for Piano I …Mizuno KANAI(Piano solo)

まどろみのなかで、とりとめのない想念が浮かび、消えては浮かび、浮かんでは消える。律動的なものと、メロディックなものが、交錯したり、かい離したり、次第に統合される。そして和音の響きが、異化され、“C♯”音の余韻が時空へと解け込んでいく。(松岡俊克記)

 

塚本一実/ソロピアノのための抒情 〜悲、憧、諦〜(2006初演) …川崎智子(ピアノソロ)

Kazumi TSUKAMOTO : DESCRIPTION for Solo piano. 〜Sorrow, Longing, Resignation〜…Tomoko KAWASAKI(Piano solo)

この作品は黒川浩氏の委嘱により作曲いたしました。黒川氏から「抒情組曲のようなもの、Iペシミズム、II実らぬ憧れ、IIIあきらめ」などの言葉を頂き、私なりにそれらを捉え創作に取り掛かりました。楽譜にはI「悲」Sorrow、II「憧」Longing、III「諦」Resignationと書かれています。私はこれらの言葉に否定的な感覚より、それらを踏まえたうえで肯定していく楽しみ、実り、光などを感じ、作曲をいたしました。音が動くのではなく、「響き、余韻」に心が動くようなものをイメージし、その響きの連なりが唄となり、私の心の描写です。曲名のDESCRIPTIONとはdescription of mindのことで、邦題では「抒情」となります。(塚本一実記)

 

遠藤雅夫/<二つの余白>ピアノのために2004〜7(世界初演) …佐藤勝重(ピアノソロ)

Masao ENDO : <Space, Potential> for Piano 2004~7 (World premiere) …Katsushige SATO(Piano solo)

この作品は2004年にスケッチし、そのまま放置され2007年に仕上げたものである。今まで取り組んできたリズム、響き、旋律からの視点の視点を簡単にまとめたものである。 I<リズムの余白>、II<響き又は旋律の余白>と分かれている。

私のピアノ独奏作品は数えて見ると結構な量ある。<浸蝕作用>1975、<水の星>1990、<スターバースト>1991、ピアノ曲集<パンドラの箱>1995、<響きへのパトス>1999、<サンピラー(太陽柱)>2000、<13のエチュード>1994〜2000、<不透明な視差>2001、<シックスティ・レッドローズ>2007。これらは私の成長とともに進化あるいは変化してきた。

<二つの余白>では軽い気持ちでこれらの進化変化を受け止めたものである。次の11の内容は私がいつも考えているアイディアをまとめたものである。

1)固い音を半音とし柔らかな音を全音とし、その組み合わせた方で欲しい固さ柔らかさの度合いを決定する。なるべくシンプルな組み合わせをモットーとする。

2)12のあるいはそれ以上の音高をシステム化する方法は採用しない。

3)同時に響く長3度の音程を純正化させるように配慮する。

4)長短三和音をうまく配合する。

5)予期せぬ、瞬時の強い音を配置する。

6)横方向、これは旋律の事ですが、短3度を2分割する音階を交える。

7)室内楽などの場合、複数の奏者が同時に音を出すことを避ける。

8)日本の尺八や能管のポルタメント感性を取り込む。

9)「始めちょろちょろ中ぱっぱ形式」に陥らないように配慮する。

10)予期せぬドラマ展開を意図する。

11)ドラマの突如の停止=フリーズを行う。

私の作品はどれもこれもこれらの調合の度合いにより成り立っている。むろん<二つの余白>も同じである。(遠藤雅夫記)

 

メトネル/2台ピアノのための作品 作品58-2「放浪の騎士」 …金井泉乃(第1ピアノ)川崎智子(第2ピアノ)

N.K.Medtner : Piece for 2 Pianos, No.2 Knight Errant. Op.58 …Mizuno KANAI(Piano 1), Tomoko KAWASAKI(Piano 2)

ニコライ・カルロヴィチ・メトネル(1886〜1951)は、ラフマニノフ、スクリャービンと並ぶ「銀の時代」を代表するピアニスト兼作曲家。モスクワ音楽院に学び、若い頃はピアニストとして活躍。正規の作曲の指導は受けていないが、ドイツ・ロマン派の情熱的な表現にロシア風の旋律や和声を加味した独特の様式の作品で人気を得た。21年に国を離れてパリに、35年に英国に渡り帰化した。これは第二次大戦中の作品で、1946年に英国で出版され、ロシア生まれのアメリカの有名なヴォロンスキーとバビンのピアノ・デュオに捧げられた。静かな序奏とコーダをもった、雄大なスケールのソナタ形式の作品で、劇的な迫力に満ちている。勇壮な旋律や悲愴な主題が次々と登場する。展開部後半では、第1主題による溌剌としたフーガが含まれている。(石田一志記)

 

山田 斉/ソナチネ(世界初演) …岩崎 淑(第1ピアノ)岡野宏映(第2ピアノ)

Hitoshi YAMADA : Sonatina for 2 Pianos. (World premiere) …Shuku IWASAKI (Piano 1), Hiroe OKANO (Piano 2)

日没間近の空は、息呑むほど美しいが、やがて夜が来るのだ。 ナボコフ

3つの楽章からなる、2004年に書き上げた、2台のピアノのためのソナチネは、第1楽章モデラート、その2楽章「エレジア、寺原伸夫の思い出のための」は、恩師、寺原伸夫の姓Терахаを主題としている。第3楽章アジタート 第2、第3楽章は続けて演奏され 全体の演奏時間は、約12分である。(山田斉記)

 

ラフマニノフ/2台ピアノのための組曲 第2番 作品17 …岩崎 淑(第1ピアノ)岡野宏映(第2ピアノ)

1.序奏 2. ワルツ 3. ロマンス 4. タランテラ

S.Rakhmaninov : Suite for 2 Pianos No.2, Op.17…Shuku IWASAKI (Piano 1), Hiroe OKANO (Piano 2)

1. Introduction 2. Waltz 3. Romance 4. Tarantella

セルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943)は、22歳の年に発表した第1交響曲の不幸な失敗で作曲活動を中断した。この《組曲第2番》は、その彼が、《楽興の時》Op.16から5年の空白をおいて1901年にピアノ協奏曲第2番と並行して作曲した作品である。シロティの下での兄弟弟子であったピアニストのアレクサーンドル・ゴリデンヴィェーイゼル(1875〜1961)に捧げられている。初演はラフマニノフとシロティによって1901年11月24日にモスクワで行なわれた。堂々とした<序奏>、ワルツのリズムと2拍子のフレーズの交差に特徴のある<ワルツ>、いかにもラフマニノフ的な叙情的旋律の<ロマンス>、ダイナミックなリズムが支配する<タランテラ>の4楽章から構成されている。(石田一志記)

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