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日本・ロシア音楽家協会 作曲部会交流コンサート 開催レポート
ロシアモダニズムの光と影
2018年
12月14日(金)19:00開演(18:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」(03-3409-2511)

 日本・ロシア音楽家協会作曲部会交流コンサート〈ロシアモダニズムの光と影〉と題された本コンサートでは、音楽的に対照的な曲風を持つ2人のロシア人作曲家と6人の日本人作曲家の作品が演奏されました。

 最初に演奏されたのは、四季4部作として作曲されている二宮毅の《秋の庭》。日本庭園の静謐な空間を描き出し、俗世をつゆ知らず一刻と変化していく四季が感じられるようで、絶妙なペダル使いが世界に色を加えていました。アルトゥール・ルリエーの《Arthur LOURIE / The MINE for Clarinet solo》は後半のミャスコフスキーの作風と比べて軽妙で、タイトルは「道化役者」という意味を持っています。クラリネットの、空間に溶け込む音が印象的で、弾みおどけた様子、何かをうかがうかのようなひっそりとした楽想等、表情を幾つも持った作品でした。続く遠藤雅夫《〈8枚のキルト〉ピアノのために》はシューマンやドビュッシー、バルトークの「子供」をタイトルにした作品に触発・作曲され、8つの曲で構成されています。全体的に意図された時のずれが楽しめ、ピアノの楽器としての面白さを引き出す試みが効果的。堀越隆一の《侏儒の祈り(原案: 芥川龍之介「侏儒の言葉」)》は、「文芸春秋」に連載された芥川龍之介の「侏儒の言葉」を素材にバスとヴァイオリンで演奏されました。芥川龍之介が生きた時代の「芸術」、「理性」、「自由」、「革命」などの言葉からは、不安定な時代に翻弄される様子が、感情に訴える歌によって表現されました。

 後半の福田陽作曲《ピアノソナタ第3番》はプロコフィエフやカバレフスキーを想起させるような作品。前半ではプロコフィエフのピアノソナタにも見られるような和音づかい、後半にかけては激しさを増しうねりを伴った感情がみられるようで、壮大で楽しい作品。金田潮兒の《Bleu fonce III・ pour Trombone solo》では、トロンボーンのミュートやグリッサンドが活かされ、現代奏法やトロンボーンの魅力を存分に味合うことができました。つづく浅香満の、1996年作曲《津軽地方の旋律によるバラード》は、なんとアシュケナージ氏のピアノとフェイギン氏のヴァイオリンで初演されたそう。ヴァイオリンと歌が交互に旋律を奏で、次第に仕掛け合う様子が曲の生命力を感じさせました。ヴァイオリンの倍音によって奏でられた旋律は、誰かの記憶を呼び起こしているかのよう。最後に演奏されたのはロシア人の作曲家、ニコライ・ミャスコフスキー《ピアノソナタ第3番ハ短調作品19》は、軽妙なルリエーの作品に対して重厚でうねる感情がみえる曲で、ピアノの低音部に寄った音の使い方が印象的でした。ロシアらしい和音で濁りがある一方で美しく情熱的でした。

(W.T.)

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