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日本・ロシア音楽家協会2015-I
スクリャービン没後100年 ピアノ・ソナタ全曲演奏会 開催レポート
日程:2015年10月4日(日)16:30開演(16:00開場)
会場:小金井 宮地楽器ホール3F大ホール(小金井市民交流センター)今年は近代ロシアを代表する作曲家、アレクサンドル・スクリャービンの没後100年。スクリャービンの遺した10作のソナタを10名によるピアニストで一挙に聴くことができる演奏会です。
第1番は、スクリャービン国際ピアノコンクールでの優勝経験を持つ、西尾真実さんによる演奏。激情的、悲劇的な部分やおだやかな部分など、感情が入り乱れます。
第2番《幻想ソナタ》は、志村泉さん。広い音域をかけめぐり、題材である海が目に浮かんできます。穏やかに、荒れる波がわかるように……、作品に寄り添った演奏でした。
第3番は村上弦一郎さん。緊張感のある第1楽章、夜空のような第3楽章が記憶に残ります。演奏中のその表情は、聴衆の気持ちも楽しい気分にさせてくれます。
休憩を挟んで登場したのは、船橋泉乃さん。ほかのソナタにあるような悲劇的な面を離れ、ロマンティックで浮揚感がある第4番を、デリケートなタッチで描き出していました。
第5番はスクリャービンコンクールの優勝者、田中正也さんによる演奏です。強烈で迫力のあるオープニング。勢いも止まらないまま、スクリャービンの世界へと聴衆を連れていきます。
第6番は太田由美子さん。作曲家本人も公の場で演奏しなかった作品です。不吉な始まりが会場を異様な雰囲気で包みますが、その不気味さに取りつかれてしまうかのような不思議な魅力があります。
第7番《白ミサ》は、矢澤一彦さん。激しいところ、静かなところと曲調が入れ替わる不思議な音楽です。とくに神秘的な部分のやわらかな音が印象的でした。
スクリャービンが最後に完成させた第8番を演奏したのは、中野孝紀さん。ほかのソナタとは異なり、全体を通して静謐で複雑な作品です。夢をさまよい、美しさや幻惑の世界を描いていました。
第9番は《黒ミサ》は岡田敦子さん。うわごとのような弱音の世界から、徐々に狂気を見せます。神聖さと悪魔との対比のような音楽でした。
最後を飾ったのは松山元さんで、第10番の演奏です。“極めて甘美に、純粋に”始まる冒頭、多用されるトリルやトレモロを経て、最後は放心。平常といえる部分が見られず、暗鬱な世界を表現していました。
複雑な音の重なりあいで醸し出される、独特な響きが人を引き付けるスクリャービン。ソナタを通して聴いてみると彼の創作や、精神の移り変わりが感じ取れるような演奏会でした。
(R.K.)
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