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日本・ロシア現代作品交流コンサート2014-II 開催レポート

● 日時:2015年1月20日(火)19:00開演(18:30開場)
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 

 

 演奏会はもとより、公開講座やシンポジウムを通じて日本、ロシアとその近隣諸国の作曲家による作品を紹介している日本・ロシア音楽家協会。今回は初演も含む、9つの作品が披露されました。

 15歳でロシアへ渡った田中正也さんによるエディソン・デニソフの《3つの前奏曲》で演奏会はスタート。ショスタコーヴィチに見出されたことをきっかけに、数学から作曲の道へと転じた異色の経歴の持ち主です。静かに音楽が運ばれる中、(3曲の中でフォルテは各1回の指定)細かくうごめくフレーズが印象的でした。

 平井正志氏の《クラリネットとピアノの為の「プロムナード4」》はシリーズ4作目の世界初演(cl:西崎智子さん・pf:志村泉さん)。タイトルを知らなくとも、“プロムナード(散歩道)”を思わせるような、穏やかで楽しい時間が流れます。

 山本純ノ介氏の《新律呂二重抄》は筝曲を連想させる部分も聴かれました。ピアニストが譜面台を叩いたり、手を自分の前で静止するなど(“隻手の声”を聴いているポーズとのこと)他曲とは一味違った表現方法も取られていました。

 松山元さんはソロで二宮毅氏の《風翳》と、ヴィクトル・エキモフスキー《プロシチャーニエ》の2曲を披露。日本初演だった後者は、調性と無調の間を移ろい、タイトルの意“別離”が表れているかのような繊細で切ないメロディーが記憶に残ります。

 矢澤一彦さんは、マリーナ・シュモトヴァの〈ソナタ・カプリス〉を。この“気まぐれなソナタ”は、単一楽章で書かれた10分に満たない作品です。短い中にさまざまなモチーフが凝縮され、表情も目まぐるしく変化していました。

 浅香満氏の《クラリネット、ヴィオラ、ピアノのための三重奏曲》(cl:西崎智子さん、va:樹神有紀さん、pf:志村泉さん)。ロシアの日本人墓地を訪れた際の「人々の心の絆を美しく結ぶことに寄与する活動をしたい」という思いが込められているそうです。

 安田謙一郎氏の《ピアノトリオ—浦上玉堂「深林絶壁」によせる即興曲》は改訂初演(vl:高橋和香さん、pf:田中正也さん)。大原美術館への委嘱作品で、作曲家自らがチェロを演奏していました。

 最後は佐藤眞氏の《弦楽四重奏曲第1番》(vl:長尾春花さん、澤亜樹さん、va:樹神有紀さん、vc:山澤慧さん)。第4楽章が改訂され、今回はその初演です。若いメンバーによる演奏はエネルギーにあふれ、特にチェロのハイポジションが魅力的な作品でした。

 馴染みのない名前が並んだプログラムでしたが、ロシア音楽史において重要視されている作曲家ばかりだそうです。今回のような演奏会は、親しみのない作品や世界に触れられる良い機会だと感じました。

(R.K.)

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